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【洒落怖】持病持ちの大家さん

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229 名前:1/3 投稿日:03/05/10 23:43
某有名メールマガジンにも投稿した話。
掲載されたけど、筆者本人だし文章は一から書き直しなので問題ないかと。

東京の大学に合格し、父親と下宿を探しに行った。
父親も私も、慣れない東京での部屋探しに手間をかける気になれず、
学生課に紹介された、大家さんが同じ建物に住む古びたアパートで即決した。

そこの大家さんは、独り身で初老のおじさんで、理由は知らないが親族らと
折り合いが悪く、しかし結構な財を成している為、生まれついた場所ではない
その辺一帯の地所を多く持ち、アパート・借家の収入で、とくに働くこともなく
一人静かに暮らしているおとなしい人だった。

後で知ることになるのだが、若い頃からの持病があり、ずっと病院通いだった事も
そんな生活をしていた理由の一因だったらしい。

230 名前:2/3 投稿日:03/05/10 23:43
そのアパートがえらくボロかったこと、最終的にその建物(隣や向かいの同じ大家さんの
持ち物である建物は除いて)に住んでいたのが、大家さんと私だけになった事を除けば、
さしたる変化もなく数年が経った。職に就いてはいなかったが、大家さんはマメな人で、
いつも建物の掃除や手入れに余念が無く、私や他の住人にも、色々と世話を焼いてくれた。
地主や大家という人達への、私の幼稚な偏見を自覚させてくれた人だった。

大学3年の11月、年末の帰省の予定を立て始めた頃、大家さんが私の部屋をノックした。
「いやーちょっと持病がね・・・」そう切り出した大家さんに、都内の大きな大学病院に入院
する事を告げられた。
「ちょっとした療養と検査だから。時々は帰ってきて、掃除もするからね」
最後の住人であった私にそう言い残し、大家さんは病院へ行った。

多少心配していたものの、大家さんは意外に元気で、数日後にはアパートを掃除する大家さんと
大学からの帰りに挨拶を交わし、私に杞憂であったと思わせた。それからは、ボロアパートながら
周囲を気にする必要のない一人住まいを満喫していた。時折、下の階に自室を持つ大家さんの
帰宅があったが、日中だけのことであった。

232 名前:3/3 投稿日:03/05/10 23:43
そうこうする内に年末が来た。明日には田舎に帰省する。コタツでうとうとしながら、ごろ寝を
していると、階下の大家さんの部屋から「ガタゴト」と音が聞こえてくる。
「ああ・・・大家さん帰ってきたんだ・・・明日帰省するって言っとかないとな・・・」
そう思いつつも、コタツの誘惑に負け、「まあいいか・・・」とそのまま寝入った。
暗くなってから起き出したが、当然大家さんは病院へ戻ってしまったようだった。
次の日、火の元と戸締まりをしてから、帰省した旨書き置きをポストに突っ込み、帰路についた。

正月が過ぎ、アパートに戻った私の目に入ったのは、喪服を着た親族を名乗る人々だった。
「あの人、死んだから。このアパート、あなたしか住んでないでしょ?家賃一緒でいいから、
向こうの建物に移ってね」
それにあたる人は居ないと聞いていた「相続人」を名乗る人が、そんな事をべらべらと喋り立てた。
あとから色々なツテで聞いたところによると、病の床で遠縁の者が、養子縁組だかなんだかで
そういった立場に収まったらしい。数年を暮らしたボロアパートは、2ヶ月と建たず更地になり、
近隣の不動産屋が管理者として看板を立てて行った。

かすかな憤懣はあったが、あずかり知らぬ他人様のお家事情。
しかし一つだけ疑問に思った事があった・・・
「相続人」を名乗る人間が垂れ流して行った大家さんの最期は、癌によるものだったそうだ。
そして命日の日付・・・
不可能ではないだろうか。癌で死ぬ人が、その前日に自室で「ガタゴト」と掃除をすることなど。

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