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1272 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:20:39 ID:8MunFEDQ0
本スレ208の128です。
“巣くうものシリーズ”で纏めてもらってるので、
前と同じく説明は省略。

.


また時間ができて、少し前にあった話をまとめたんで、気晴らしに投下。
去年の秋の話です。
H、コンパクトの件で懲りたのかと思ったら、懲りてない。
相変わらず『みえる』のを利用してちょいちょい稼いでるようで、
その奴の『小遣い稼ぎ』に関わる話。
いつもHはいらんことする、と奴の絡む話には常に不愉快
(でも他に“みえるひと”の知人がいないため縁切り困難)
のAが、文句より興味で根掘り葉掘り聞いてた、怖いよりは
珍しい(らしい)事例です。
コンパクトの件を投稿してから、何ヶ月かしたころ。
Hから連絡がきて、飲みに行くことになった。
んで呼び出された先が、変な場所だった。
少し距離のある市で、街外れに森っぽい林があって、その中。
おいおい、と思いつつ指示された通り砂利を敷いた道に入ったら、
何か寂れた石碑みたいなもんが奥にあった。
石碑の横で待ってたHに「おいこら」と言うと、奴は
「大丈夫、大丈夫。居るけど、しょぼい奴だから♪」
とかほざいて、カッカッカと笑った。
1273 :本スレ208の128:2011/06/16(木) 10:21:47 ID:8MunFEDQ0
「そーか。んじゃ、とっとと出て飲みに行こうぜ」
と俺が言ったとこで、Hの携帯が鳴って奴が出た。
「はーい♪J(俺。以後、俺の略称はJとします)来たよ。あ、ここ」
Hが携帯を切り、砂利道を歩いてきたBに手を上げた。
「やっほー♪Jくーん」
手を上げ返しながら歩いてくるBの姿。手にはコンビニ袋。
「お疲れー。Bさん、コンビニ行くとき迷わなかった?」
「少しだけ。横道間違えちゃったみたいでした、ここ戻るときも」
答えたBが、コンビニ袋の中身――雑誌とかお茶ペットとかガムとか、
何か細々したものを、下げてたバッグに詰め替え始める。
その隙に俺がHを見ると、小声でコソコソ説明してくれた。
「頼まれごとで、話の段階じゃよくみえなくてさあ。最悪のケース想定して
Bさん呼んどいた。勇み足だったけどねー」
そう言や、会う日時と場所を指定したのはHだった。
何も知らない既婚女性のBを一対一で呼び出せる仲じゃないから、
俺を口実に使いやがったらしい(Cは嫌がったんだろう。怨霊塊憑男Iの
件以来、Bの話はしたくないっぽい様子だから)。
呆れた俺に構わず、Hは続けました。
「JとBさん、仲悪くはないんだよね?今日は一緒に飲みでオッケー?
一軒目でBさん帰して次行ってもいーよ。一軒目、俺おごるよ」
「や、B一緒で全然構わないし。3人でいんじゃね?」
で、そのまま飲む店の相談してたら、またHの携帯が鳴った。
携帯を見たHは、俺とBに向かって言った。
「悪い。ちょい待ってて。少しかかるかもしんないけど」
Bは「J君いるし、大丈夫~。お喋りしてます~」と能天気に答え、
Hは俺だけにこそっと、
「この辺、Bさんいたら寄っても来れない連中ばっかだからさあ。
全く心配しなくていーよ♪」
と言い、夕日の射し始めた木立の間に消えてった。
1274 :本スレ208の128:2011/06/16(木) 10:22:35 ID:8MunFEDQ0
そいでBとダラダラ学生時代のこととか喋ってたら、ものの数分で、
「おい、J(俺)!!」ってHの声がした。
何か妙にあせった声だった。
「……?おう。何だ、早いじゃん」
「あー。ちょい、こっちきて!」
ややあって、道じゃなく横の林の中から現れたHは、頭に蜘蛛の巣を
引っ掛けて肩に葉っぱつけて、変に青ざめていた。
「………?H、何かあったのか」
俺が尋ね、Bも「Hさん~?」と不思議そうに聞いたが、
Hは答えもせずに凄まじい勢いで近づいてきた。
そして俺の腕をがっしり掴んで、結構な力で引っ張りつつ
「来いよ」と言った。
何か変だ、と思って、俺は何となく腕を引く力に抵抗して、
引っ張り合うようになったところへBが割って入るように
近寄って「Hさん、何したんですか?」と言った。
そしたら。ぶったまげたことに、凄い勢いで向き直ったHが
ぱっと俺を放したかと思うと、Bの胸倉を掴んで、ぶん殴った。
バキッと、グーで、女の顔面を。
悲鳴を上げて倒れるB。
俺は仰天して、動くことも出来ずにただHの形相を見ていた。
さらにBを引き起こして2発目を入れようとするHを、
やっと動いた俺が引き止めて手を放させた。
Bは、よろけながら立ち上がり、止める間もなく
「キャ―――――!助けて――――――――!」
みたいに叫びながら、林の中に走りこんで逃げだした。
慌てて追おうとした俺の肩を掴んだHを見て、表情に正直びびった。
これマジでHか?と思った俺の耳に、Aの声が刺さった。
『J君?Hさん?大丈夫――――――?』
「あ―――――――大丈夫!今、撃退したから!」
Hが張り詰めたような大声で返す。
「……ほい、J」
やっと少し表情の和らいだHは、携帯を俺の耳に突きつけた。
『J君?もう居ない?Bのニセモノ』
「……え?」
思わず聞き返した俺に、Aはざらっと説明してくれた。
……さっきまで俺と居て、Hを待ちながら俺と大学時代の話とかしてて、
Hに殴られて走って逃げたBは、Bじゃない、と。
1275 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:23:31 ID:8MunFEDQ0
完全に思考の停止した俺をHが引っ張って、林から普通の道路に出て
しばらく歩いて、コンビニを見つけて近づいた。
もう薄暗くなった駐車場に、Bが居て。携帯をいじってました。
「あ、J君!Hさん!」
元気よく声を上げたBの顔には、殴られた痕など全くなく。
「待ち合せ場所に戻ろうとして道に迷って、コンビニ戻っちゃってー。
メール出しても返事ないから、電波悪いのかなって焦ってたんですよ」
「……うん、電波悪かったしJ来たし、動いちゃった。メールは来てないなあ」
辛うじて笑ってみせたHと、まだ思考停止してた俺の携帯が、一緒に鳴った。
『Bです。すみません!コンビニには着いたけど、そこ戻る道が解らなく
なっちゃいました。コンビニで待ってるので、J君着いたらコンビニ来て
くれませんか?』
着信したメールを読んでやっと頭が動き始め、混乱の渦に巻き込まれた
俺をよそに、HとBはまた飲みの店を相談してた。
決めるとさっさと電話して予約した2人に引きずられ、
とりあえず飲んで喋り、一段落したら早めに店を出て
『主婦だしお子さん居るから、そろそろお開きで』
とHがBを言いくるめて解散し、俺は半ば混乱したまま帰宅しました。
1276 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:24:29 ID:8MunFEDQ0
数日後。Hと連絡を取りA交えて3人で会って、やっと俺は事情説明を
受けることが出来ました。
『分身というか、自分の姿を見る人が出る場所。祟り等がないか
調べてくれ』
との依頼を受け、見た人と直接会ったHが、敵の気配や強さが何故か
読めないことに心配になり保険にBを呼ぶことを考え、口実に俺との
飲みをセッティングしたのは、前述の通りです。
とりあえず気配を探りに1人で現地入りしたHは、相手の気配が
予想以上にしょぼくて貧相なことに拍子抜けしたそうです。
確かに霊的なものが居る、だけど年代物の割りに本当にしょぼい。
相談者に会っても読めなかったのは、しょぼすぎて気配が弱かった
からだ、と納得したほどで。
分身とかを“みせる”以上のことができそうには全く思えないから
気にする必要なし。それが当初のHの結論でした。
「いやね、本っ当に貧相だったのよ。来て損したと思うくらい」と。
で、Bが待ち合わせ場所の石碑に来て、二人でJ(俺)を待ったが、
最悪の事態を想定して(ヤバいモノが居たら、うまいことBのアレを
使ってB当人には気づかせずに片付けよう、と算段してたらしい。
Hのこういうとこが、Aの神経に障るようですが……)、待ち合せ時間を
ずらしてあったので、暇すぎて間が持たない。
Bがガムを欲しいと言ったので、コンビニへの道を教えて行かせた。
1人残って、漂えども姿はない貧相な気配をお遊び程度に探ってるうち、
俺到着。つづいてB帰還。
「その時はね、本当に変だとは思わなかったんだよ。アレもいたし」
1277 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:25:15 ID:8MunFEDQ0
HもAも、みえるひとは皆、人をみるときには外見だけじゃなく
自然に気配や憑いてるモノもみるのだそうです。
Bは全く普通に間違いなくBの気配を持っていて、“アレ”も居た。
何も疑う要素はなかった。
ただ一つ違和感があったのは、ちゃんとみえる“アレ”の気配が
変に弱いというか薄いこと。
気配の質は同じだから、Bの中に引っ込むと気配が弱まるのか、と解釈して
スルーしたのだが、仕事電話で石碑を離れてからもやはり気になる。
何だろう、あの、みえるのに弱いってか、薄いってかペラいってか、
と考え続けててふっと頭に浮かんだ言葉。
『ハリボテみたいな気配なんだ』
いや、引っ込むと外側が抜け殻っぽく残るのかも、と考えても
違和感が打ち消せない。
形だけ残して中身が引っ込むとか、何か凄く不自然だ。
そういう偽装とかハッタリとかと一番無縁な、生の力がむき出しで
いるような存在が、Bのアレなのに。
どんどん不審が増してきたので電話を中断して引き返し、
こそっとBの写メを撮って、Aに送って聞いてみたそうです。
すぐにAから返信があり『Bのアレじゃない。絶対違う』と断言。
アレは引っ込むと形がみえなくなる。その時も気配は残り香みたいに
Bを包んでいる。弱くなんかならない、と。
その返事を受け取ったHは、瞬時に結論に到達したそうです。
アレが偽物で背負ってるBが本物ってのは、絶対に、ない。
有り得ない。どんなにそっくりでも、Bごと偽物なんだ、と。
……その辺の理屈は、正直俺の理解できない点もありましたが。
とにかく“偽物のアレを背負った普段通りのB”は、みえるひと
視点では有り得ないようです。
1278 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:26:28 ID:8MunFEDQ0
なお、Hを焦らせAにも驚きだと言われた事実。
それは、石碑に居たモノが気配や憑き物を模写したことでした。
2人の言では、他人の声や姿を真似るモノはワリといる。
そして人間の姿を模した程度のものは、本人の気配とか憑依してる
霊とかを写さないので、幻覚でも化けてても、みえるひとには
疑問の余地なく解るのだそうです。
なのに今回のモノは、本人の気配やオーラ(的なもの)どころか、
背後の霊の気配まで含めてコピーしようとしたわけです。
これは本当に、みるのも聞くのも2人とも初のケースだそうな。
「Bさんのアレも特殊レアものだし、さすがにコピりきれなかったん
だろーけど。それでも、あの精度だよ?ふつーの人なら、守護霊まで
完全にコピーできる可能性が高いよ」
「Hさんが騙されたくらいだもんね…何だろ?ソレ、弱いってのも
フリじゃかったんですか?」
Aの質問にHが身振り手振り交えて説明した限りでは、Aの見解も
「それは確かに。取るに足らないレベルですよね」
とのことだった。
そのしょぼい貧相な気配がBを模して何をしたかったのかも、謎です。
あの時Hは俺が狙われたのかと慌てたそうですが、冷静に返ってみると、
生身の人間1人をどうこうできる程の力はなかったようだと。
そして今となっては、調査もできない状態だったりする……と言うのは、
あの日、Hに全力でぶん殴られたモノに何があったのか、あれ以降、
その貧相な気配の持ち主は居なくなってしまったからです。
1279 名前:本スレ208の128 投稿日: 2011/06/16(木) 10:27:43 ID:8MunFEDQ0
後日、石碑を訪れたH(with 俺とA)は「居なくなっちゃった」と
苦笑しながら言いました。
Aも同意したし、その頼まれ事は、どうやらこれで解決ってことに
なるらしい。
パニックでフルスロットル状態のHに殴られて、消えたか逃げたか
したんじゃないか、とはAの言です。
また、Hの突然の暴行に仰天した以外は特に体感がなかったと
思った俺だが、後で思い出すと、ひとつだけ確かに変なことがあった。
石碑の横でB(だと思ってた何か)とひとしきり喋った記憶があるのに、
何を話したか全く思い出せないんだ。
『大学の頃の話をした』と言うような曖昧な記憶だけ残ってて、
何年生の時のこと、とかどのイベントの話、とかが全く解らない。
飲み屋で本物のBが喋ってたことは、俺が上の空気味だったにも
関わらず、しっかり覚えてるのに。
HとAに話すと、さらに難しい顔で「ってことは、幻覚系じゃないよな」
「変身で、Hさん騙すほどそっくり?うーん……」と、
二人して首を傾げていました。
長いわりに結局オチなしですが、以上です。

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