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【洒落怖】この手の冷たさは、気温のせいか? ずっと肌寒いのは何故だ?お前は自分が生きていると、本当に言い切れるのか・・・?

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416: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/06/09 10:36

「嵐の夜のひみつ」
・作者は日本人
・表紙は黒地にぽっかりとハダカ電球が浮かんでいる絵

 透は山岳部所属。友人3人と山登りに来たが、仲間たちとはぐれ
てしまう。最悪なことに天気は崩れ、やがて暴風雨となった。透は
奇跡的に仲間と再会するが、下山は無理なので、途中で見つけた粗
末な山小屋に避難することにした。
 山小屋は12畳くらいの広さだ。真正面にトイレのドアがあり、
入り口のドアの脇に大きなガラス窓がはまっている。部屋の真ん中
にぶら下がっている大きな裸電球のほか、部屋には何もない。やが
て夜になったが、嵐はますますひどくなっているようで、とても外
には出られない。どうやらここで一晩を過ごすしかないようだ。
 透の服はびしょ濡れだった。小屋はすきま風がひどく、ひゅうひ
ゅうと冷たい風が流れてくる。夜が完全にふけると恐ろしいほど気
温が下がった。
このまま寝たら風邪をひくだろう。肺炎を誘発した
り、最悪死んでしまうかもしれない。透はガタガタ震えながら、必
死で眠るまいと努力する。
 幸一がある提案をする。部屋の四隅に一人ずつが寝る。一人が右
隣りの隅へ歩いていき、そこに寝ている者を起こす。起こされた者
はまた右隣りの者を起こしにいく。そうすると必ず誰かが目を覚ま
していることになるのだ。
 電気が消された。だがもともと透はひどく怖がりなので、疲れて
いるのに眠れない。余計なことを考えているうち誰かに身体を揺ら
された。左隣の弘明だろう。透は大輔を起こしにいく。それを二度
ほど繰り返してから、透はある事実に気づいて絶叫する。

417: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/06/09 10:36

 このローテーションは5人いないと無理だ。部屋の四隅に一人づ
ついる。一人目が二人目の場所へ移動し、二人目が三人目の場所へ
移動し、三人目が四人目の場所へ移動する。四人目が一人目の場所
へ行ったときには、一人目は二人目の場所へずれているから、そこ
は空白でなければならない筈だ。透は幽霊がいる!幽霊がいる!と
言って大騒ぎを始める。
 ところが仲間は落ち着いたものだった。幽霊なんかはいないと相
手にしようとしない。そのうちに寒さのせいだろう、「トイレに行
きたい」と幸一が言うと、その言葉で尿意をもよおされたか、三人
がドアをあけ、互いに譲り合いながら用を足す。透はひとり離れて
部屋の隅で考えを巡らせる。
 自分を起こしたのは弘明だったのだろうか?あるいは、彼が起こ
したのは本当に大輔か?肉の感触はあった。だが幽霊はいなくては
ならない。そう考えるうち、透は、このうちの誰かが幽霊なのでは
ないか・・・と思い始める。実はもう死んでいて・・・。透は身を
震わせる。そういえば自分は仲間とはぐれていたのだ。ばらばらに
なった四人を探し出したのは大輔だ。だがあの嵐の中、そんなこと
が起こりうるだろうか?四人が再び合流するなどという可能性は・
・・。三人ならまだしも。
 四人は電球をつけて、車座になって座る。黄色い明かりが四人の
顔を照らし出す。しばらくの沈黙を破って幸一が口を開く。
「この中に・・・死んだ人間がいるな?」

418: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/06/09 10:37

 弘明が大笑いを始める。馬鹿げた話だと一蹴して相手にしようと
しない。だが幸一は平然として、そう言うのはお前が死人だからだ
ろう、と言う。弘明が腹を立てる。温厚な大輔がまあまあと二人を
なだめる。嵐の中、自分が見つけたのは、間違いなく生きている三
人だったと断言する。透がはっと顔を上げる。三人を見つけたのは
必ず大輔だった・・・あの状況で?そんなことが普通の人間にでき
るだろうか。可能だったのは、大輔がもう死んでいるからではないのか・・・?
 そう考え出すと、誰もが怪しい。冷笑的な弘明は怪しい。変に落
ち着いている幸一も怪しい。大輔も怪しい。透は言う。何とか幽霊
であることを――あるいは、ないことを――証明する手段はないも
のかと。幽霊は手が冷たい筈だ、と大輔が言う。幸一は鼻で笑う。
全員の手足が冷え切っているさ、と。お互いに触りあったがみな氷
のように冷たい。顔色を見ようにも、黄色い光の下だし、だいいち
光がもっと強くても、全員の顔色は決まって青白いだろう。
 肉の感触は当てにならない。いま握った手は明らかに弾力があっ
たし、それはさっきゆり起こしたとき、あるいはゆり起こされたと
きに明白な筈だった。それ以外に証明の方法は?大輔がぼそりと言う。

「そう言えば、死んだ人間は、鏡に写らないっていうよね?」
 それを聞いて弘明がけたけた笑う。幸一が彼をにらみつける。
「たしか、トイレに小さな鏡があったな」と幸一。
「いいぜ俺は。写るかどうか確かめても」
 苛立った口調で弘明が言う。
「だいたい、お前らはみんな怪しいんだ。俺は、俺が生身の人間だ
ってことを知ってる。俺は幽霊じゃない。確かなのはそれだけだ」
 幸一が鼻で笑う。「どうだか」
 二人がつかみあいの喧嘩を始める。仲介に入った透を、弘明が弾き飛ばす。
「大体な!お前が一番怪しいんだよ!」
 透はぞっとする。三人の視線が、いっせいに透の身に注がれる。

419: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 03/06/09 10:38

「そうだ」幸一が落ち着いた声で言う。
「一番怪しいのは透だ」
「何で?」声が震える。「何でそんなことを?」
「さっきみんながトイレに行った・・・遅れて一人で入ったのはお前だ」
「それが・・・?」唾を飲み込む。
「お前は誰とも一緒に入ろうとしなかった。何故だ・・・?トイレには鏡があるからだ。
お前は、お前の姿が鏡に写らないことを、他の誰にも知られたくなかったんだ」

「そんな馬鹿な!」透は笑おうとしたが、うまくいかなかった。
「じゃあ何で、一緒に行かなかった?」
「・・・狭いし、考えごとを・・・」
「怖くなかったのか?俺だって怖かったのに」と弘明。
「そうだ・・・人一倍怖がりの君がね」と大輔。

 三人の目が、透に注がれていた。嘘だ、と透は思った。自分は生きてる・・・
それは自分が知っている。・・・だが本当か・・・?本当に自分は生きているのだろうか・・・?

 仲間とはぐれたときのことを考えた。大輔が見つけてくれるまで
自分は何をしていたのか?覚えがない。自分は死ぬのだ、と絶望に
かられなかったか?その時、本当に死んでいたのではないか?自分
では気づかないだけで・・・崖から落ちるか、あるいは雷に打たれ
て、死んでいるのではないか?この手の冷たさは、気温のせいか?
ずっと肌寒いのは何故だ?お前は自分が生きていると、本当に言い切れるのか・・・?

 どーんと雷がなり、後ろの窓ガラスがびりびりと震えた。三人の
凍るような視線に耐えられず、透は振り返った。電球の明かりを反
射して、窓ガラスは部屋全体を写し出していた。鏡のように。そし
て透は絶叫した。三人の目線の意味に気づいたから。凍るような視線・・・

 ガラスに写っていたのは、透だけだった。


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