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【洒落怖】「エンコってのを知ってるかい?」史家が問うてきた。 ここらでいうエンコウ(河童)のことですか?と返すと、 「まぁ似てるんだがちょっと違う。いや、出自は一緒なのかもしれん。  エンコってのは幼子ほどの背丈でな…」

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204: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2008/01/07(月) 23:29:23 ID:XiMVgNU+0
私の同僚で、磯釣りに嵌っている者がいる。
釣具屋に入り浸り、ついにはそこの常連と有志で、釣り大会を開催することになった。
何故か釣りをしない私まで、手伝いとして駆り出される羽目になる。

常連客の中に大学の先生が居るのだが、その人が友人を一人連れてきた。
「こいつも釣りが好きでね。一番得意なのは坊主釣りだ」
「抜かせ。坊主はお前の方が多いだろうが」
中々に愉快な初老のコンビだ。気に入られたらしく、色々と四方山話をしてくれた。

聞けばこの友人の方、地元の郷土史家もやっているらしい。
「史家ってほどのものじゃないがね。
 早めに定年しちまったから、好きなことやらせて貰ってるよ」
私も好きな方なので、そちらの話で盛り上がった。
どういう流れだったのか覚えてはいないが、話の流れが地元の妖怪伝承になった。
いやまあ、そっちへ誘導してしまったのは、間違いなく私だろうと思うが。

「エンコってのを知ってるかい?」史家が問うてきた。
ここらでいうエンコウ(河童)のことですか?と返すと、
「まぁ似てるんだがちょっと違う。いや、出自は一緒なのかもしれん。
 エンコってのは幼子ほどの背丈でな。
 四本指で川の深い所に棲んでるってことで、元々はエンコウから連想されたんだろ」

詳しくはありませんが、それはエンコウと考えてもいいんじゃないですか。
ウの字が無いだけで、後はほぼ同一なんでしょう?

「いやエンコウは淵猿という別名があるほどで、古くから伝えられている妖怪だ。
 夏は水に潜って淵猿になり、冬は山に籠もって野猿となるって輩ども。
 儂の言ってるエンコってのはそんなに古くない。
 おまけに、こいつを産み出しちまったのは、実のところ人間なんだわ」

205: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2008/01/07(月) 23:30:15 ID:XiMVgNU+0

「これは○○辺りの山奥の話らしいんだが、そこらはひどく貧しかったみたいでな。
 間引きなんかも珍しくなかったそうだ。
 良心の呵責があったせいかどうかわからんが、間引く際にけったい(奇妙)なことを
 していたらしい」

けったいなこと?

「赤ん坊の指を、一本欠いてから間引いてたって。
 で、その亡骸を集落近くの、一番深い淵に沈めてた。
 “これは人間じゃねえ、エンコなんだ”って、そう自分に言い聞かせてから、
 事に及んでたんだろう。
 どこからかエンコウの話を聞いてきた衆が、似たような物の怪をでっち上げて、
 間引きに利用してたって、詰まるところそういう話だ。
 だからここで言うエンコってのは、元々河童や淵猿なんかじゃない。
 紛うことなく人間だった存在なんだよ」

・・・何とも辛い話ですね。人を妖怪に仕立てて間引きしていたんですか。

「いや、内容がアレだから大きく喧伝されないってだけで、こういう類の伝承は各地に
 残されてる。間引き自体はそう珍しい話じゃないしね。
 ところがこの山村じゃ、話がここから更に変な方に転がっていくんだな。
 子供を沈めてた淵、その周りで、本当にエンコが出るって噂になったんだ。
 いや、エンコの所為にして間引きを始めてからどれほど後に、そんな目撃談がされる
 ようになったのかはわからんが」

206: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2008/01/07(月) 23:31:48 ID:XiMVgNU+0

「集落の者たちは戦慄したことだろうよ。
 エンコなんてモノは元々いなかった筈なのに、実際に目撃されるようになった。
 怨霊の類だってすると、そりゃ他でもねえ自分たちが撒いた種だ。
 余所のエンコウや河童の昔話は、どことなくユーモラスなとこが見受けられるけど、
 ここのエンコ話は、えらく陰惨なイメージで語られてた。
 尻子玉抜いたりとか、悪さをしたってことは伝えられていないが、とにかく恐ろしい
 存在だってな。ま、やってたこと考えりゃ仕方のないことだけど」

一つお聞きしたいんですが、○○って地名、今の△△って辺りじゃないですか?

「何だ知ってたのか。それならそうと言えよ。バツが悪いじゃねえか。
 しかし、もう伝える者もほとんどいない話なのに、よく知ってたなぁ」

知らなかった。エンコなんて妖怪、それまでまったく知らなかった。
△△というのは、友人の住むマンションがある辺り一円の地名である。
まさかと思い適当に言ってみただけの話が、意図せず的中してしまった訳だ。
そうか。昔は山奥であったのだけど、今は開発されて、マンションが立てられるような
程良い山になってしまったということか。

沢山の黒い手形が、エレベーターの中に押されていたというエピソードを思い出した。
確か指が欠けたのも多いという話だったが・・・。
そして、仮設事務所の黒い手形や、結露した窓に押された手形の話も・・・。

エンコ、あの辺りにまだ居るのかもしれないな。
そんなことを考えている内、釣り大会は何事もなく終了する。
私と談笑した二人組は、残念ながら共に坊主であった。

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